学者くずれ×ひとり親の貧困交差点

博士号持ち・子持ち・メンヘル持ち。職なし・連れ合いなし・気力なし。それでも今のところ、なんとか生きています。

野田市小4女児虐待死事件に思うこと2~周りの大人も孤独にしない~

引き続き、 野田市小4女児虐待死事件の報道に触れて思うことを書いていきます。
今回の事件では、市の教育委員会と管轄の児童相談所に特に批判が集まっているようです。
教育委員会は、被害女児が父による被害を訴えた、学校のいじめアンケートを、父親に提供したことが批判されています。

女児がアンケートに回答したことで、千葉県の柏児童相談所につながり、2017年11月、女児は一時保護されます。1ヶ月の保護の後、2ヶ月あまり親族宅で生活していました。
その間に父親は学校と市の教育委員会を訪れ、アンケートの開示を求めます。再三にわたる恫喝の結果、教育委員会学校教育部の次長は、アンケートのコピーを父親に渡してしまいました。
同次長は、謝罪会見で「恐怖感を覚え精神的にも追い詰められて影響を深く考えられなかった」と述べています。

www3.nhk.or.jp

要するに、脅しに屈したわけですが…。
昨日の記事でも書きましたが、この父親は、暴力を振るい慣れている人物だと推測されます。

komorikahko.hatenablog.com

一方の教育委員会は、基本的に、学校だの行政だのを権威ある存在とみなす相手がいてなんぼの存在です。暴力だの恫喝だのを課長クラスが対応するような組織とは思われません。

さらに、この次長は、アンケートを提示したことを誰にも相談しなかったことが明らかになっていますが、それは、次長が口を拭ってしまってその後問題が起きなければ、この事実は表沙汰にならなかったということで、おそらく次長が単独で件の父親に対応することになったのでしょう。
教育委員会職員は公務員ですから、トラブルはないのが当たり前で、内部でトラブルを起こせば処分の対象になります(例えば、守秘義務を怠ったとか)。しかし対外的に、組織の問題というべき問題が生じたとき(例えば、守秘義務を怠れる状況があったことによって個人情報が悪用されたとか)は個人が責任を問われるとは限りません。

教委の職員も人間です。恫喝の内容によっては恐怖を覚えるでしょう。
娘の情報を父が要求した際に、それを拒否する法的根拠は、父親に明確に提示できる程度に明文化されていたのでしょうか。示した根拠に従わせる頃ができる程度に、職員の身の安全は守られていたのでしょうか。
次長を免責したいとは思いませんが、彼を責めて終わりではなく、情報の提供を可能にしてしまった組織の不備を問うことが、第二第三の被害者を生まないために必要になってくると思われます。

この件について、多様な保育を提供するNPO法人フローレンスの代表である駒崎弘樹氏が、「いじめや虐待等、法律的問題を予防・対応するために学校をサポートする弁護士」=「スクールロイヤー」をすべての学区に配置することを提案しています。

www.huffingtonpost.jp

私は駒崎氏の政治的思想に関しては全く賛同しませんが、子どもの福祉という点では同意するところが多々あります。スクールロイヤーの配置という考えにも大いに賛同します。
仮にすぐに始まったとしても、全国への普及とか、すべての市区町村がこれに従うかとか、そもそもいわゆる「金にならない」ジャンルを扱う弁護士が必要数確保できるのかといった疑問は多々あります。また、スクールロイヤーが整備されたとしても、虐待はなくならないことは、すでにスクールロイヤーが整備されているアメリカを見れば予想できるところです。
それでも、複数の組織の、複数の立場から子どもをサポートすることで、誰かが単独で暴力的な保護者に対応するようなことは減らしていけるでしょう。